仲長統『昌言』損益篇を読んでみよう:その7

その6(https://t-s.hatenablog.com/entry/2020/08/24/000100)の続き。





盜賊凶荒、九州代作、飢饉暴至、軍旅卒發、橫税弱人、割奪吏祿、所恃者寡、所取者猥、萬里懸乏、首尾不救、徭役並起、農桑失業、兆民呼嗟於昊天、貧窮轉死於溝壑矣。今通肥饒之率、計稼穡之入、令畝收三斛、斛取一斗、未為甚多。一歳之閒、則有數年之儲、雖興非法之役、恣奢侈之欲、廣愛幸之賜、猶未能盡也。不循古法、規為輕税、及至一方有警、一面被灾、未逮三年、校計騫短、坐視戰士之蔬食、立望餓殍之満道、如之何為君行此政也?二十税一、名之曰貊、況三十税一乎?夫薄吏祿以豐軍用、縁於秦征諸侯、續以四夷、漢承其業、遂不改更、危國亂家、此之由也。今田無常主、民無常居、吏食日稟、班祿未定。可為法制、畫一定科、租税十一、更賦如舊。今者土廣民稀、中地未墾。雖然、猶當限以大家、勿令過制。其地有草者、盡曰官田、力堪農事、乃聽受之。若聽其自取、後必為姦也。
(『後漢書』列伝第三十九、仲長統伝)

盗賊や不作が全土でかわるがわる勃発し、飢饉は俄かに起こり、軍隊も急に編成され、そのたびに急に弱者に課税され、官吏の俸禄は奪われ、頼みとする者は少なく、取る者は多く、どこも窮乏して救われず、徭役も何度も起こり、農業・養蚕の仕事は失われ、多くの民の怨嗟の声が天に満ち、貧窮して溝に落ちて死ぬという羽目になる。



今の取れ高を計算すると、畝どとに三斛で、斛あたり一斗を取るのは、とても多いとまでは言えないだろう。それならば一年で数年の蓄えになり、緊急の徭役、奢侈をしたい欲望、寵愛に対する恩賜があったとしても尽きないだろう。古の法に従わずに税を軽くすれば、いったん四方のどこかで侵攻があったり、災害が起こったりしたとき、三年もしないうちに収支が合わなくなり、兵士すら粗末な食事をするのを座視するしかなく、飢餓の民が道にあふれるのを見ているしかない。このような政治を行いたいだろうか?


二十分の一の税でも異民族の「貊」と同じなのである。まして漢の三十分の一はどうであろうか?そもそも官吏の俸給を減らして軍の費用に充てるのは秦の諸侯と四方の異民族征伐に始まり、漢もそれを受け継いで改めなかったものである。天下の乱れはここから起こっているのだ。



今、農地には定まった主が無く、住居には定まった住人が無く、官吏もその日暮らしで本来の俸給も無い。画一的に十分の一の税にし、人頭税も旧来通りにするべきである。今、土地が余り人が少なく、中原は耕作されていない。それでも豪族には土地所有を制限するべきで、草の生えている土地は官田とし、農業をしたいという者に耕作を許すべきだ。これを自由にさせると、いずれ災いとなるだろう。






増税と官田の制度を主張。官田は豪族には与えず、農業をしたいという者に耕作を許すという前提らしく、これは当時の屯田に通じる制度なのかもしれない。もしかするとだが。