王杖

俗説、高祖與項羽戰、敗於京・索間、遁叢薄中、羽追求之、時鳩正鳴其上、追者以為必無人、遂得脱、及即位、異此鳥、故作鳩杖以賜老人也。謹案、少蔯氏官五鳩、鳩民者、聚民也。周官羅氏「獻鳩養老。」漢無羅氏、故作鳩杖以扶老。
(応劭『風俗通』佚文)


漢の高祖が項羽に追われて身を潜めた時、頭上で鳩が鳴いた。項羽の追っ手は鳩が逃げずに鳴いているならその辺には人間は居ないだろうと思ってそこを探さなかったので高祖は助かった、ということがあったという。

高祖は即位後に鳩を特別な鳥だと思い、老人に鳩の飾りのある杖を賜与するようにしたという。




この杖の存在は漢代の簡牘資料の話題になると確実に出てくる武威磨咀子漢墓の「王杖」および「王杖十簡」等の出土資料と符合する。

王杖は老年者に賜与され、食事の支給などの便宜が図られたりしたという。

詳しくは冨谷至先生の「王杖十簡」などを参照してください(意訳:俺よくわかんねーしめんどくせー)。



出土資料と文字資料がお互いに正しさを証明しているといえよう。
風俗通の応劭先生は適当なことを言っているわけではなかったのである。