貝殻

會有上書言古者以龜貝為貨、今以錢易之、民以故貧、宜可改幣。上以問丹、丹對言可改。章下有司議、皆以為行錢以來久、難卒變易。丹老人、忘其前語、後從公卿議。
(『漢書』師丹伝)

前漢末、哀帝の時代のこと。「古は亀の甲羅や貝殻を貨幣にしていたが、今では銭を貨幣にしている。だから民は貧しいのだ。貨幣制度を改めるべし」という主張をする者がいた。

儒者の宰相である大司空師丹は哀帝より意見を求められると賛成したが、その後所管官庁で検討して議論した際にはみんな反対だったため、前言を忘れて一緒になって反対に回ったという。


銭を貝殻に替えてしまえという主張は相当過激な意見に思えるが、一度は宰相がそれに賛成し、その後もかの王莽が貨幣制度改革を行っていることなどから察するに、このような意見は当時では必ずしも奇矯ではなかったようである。