『漢書』王莽伝を読んでみよう:中その13

その12の続き。



是時百姓便安漢五銖錢、以莽錢大小両行難知、又數變改不信、皆私以五銖錢市買。譌言大錢當罷、莫肯挾。莽患之、復下書「諸挾五銖錢、言大錢當罷者、比非井田制、投四裔。」
於是農商失業、食貨倶廢、民人至涕泣於市道。及坐賣買田宅奴婢、鑄錢、自諸侯卿大夫至于庶民、抵罪者不可勝數。
秋、遣五威將王奇等十二人班符命四十二篇於天下。徳祥五事、符命二十五、福應十二、凡四十二篇。
其徳祥言文・宣之世黄龍見於成紀・新都、高祖考王伯墓門梓柱生枝葉之屬。符命言井石・金匱之屬。福應言雌雞化為雄之屬。其文爾雅依託、皆為作説、大歸言莽當代漢有天下云。
(『漢書』巻九十九中、王莽伝中)

この時、人々は漢の五銖銭を信用しており、王莽の大小二種類の銭が両方通用するかわかりにくく、更に何度も改変されていて信用されず、皆ひそかに五銖銭で商取引をし、大銭は廃止されるはずとの風説が流布し、所持しようとしなくなった。王莽はそれに困ってこう命令した。「五銖銭を使った者と大銭が廃止されるはずだと言った者は、井田制を非難した者と同様に四方の辺境へ追放する」



その後農業も商業も混乱し、食も貨幣もおかしくなって人々は道ばたで泣きわめくほどになった。また、田宅や奴婢を売買したこと、銭を盗鋳したことについては、諸侯や大臣、官僚から庶民に至るまで、数えきれない数が罪に問われた。



秋、五威将王奇ら十二人に分担して天からの予兆など四十二種について天下に広く伝えさせた。



黄徳についての瑞祥五件、天からの王朝交代についての予兆二十五件、福に感応して起こった現象十二件、あわせて四十二種類であった。



黄徳についての瑞祥は漢の文帝や宣帝の時に成紀や新都で出現した黄竜、王莽の先祖王伯(王遂)の墓の門の木から枝や葉が生えたことなどであった。天からの王朝交代についての予兆は井の石や金の箱などであった。福に感応して起こった現象は雌鶏が雄に性転換したことなどであった。どれも経書に近い文章を作って王莽が漢王朝に代わって天下を治めるべきである、という内容を説いた。

王莽の貨幣、さっそく暗雲。




そして、引き締めのためか王莽は瑞祥の宣伝を図る。


十五年春、黄龍見於成紀。
(『漢書』巻四、文帝紀、文帝前十五年)

夏四月、黄龍見新豐。
(『漢書』巻八、宣帝紀、甘露元年)


黄竜」とは漢王朝の盛んな時代に既に現れていたこれらの竜のことを言う。


「新都」に出現したと言っているが、宣帝の時に黄竜が広漢郡に出現したという記録もあるらしいので、広漢郡新都県のことを指している可能性もあるかもしれない。ただ実際のところはわからない。




この五威将らにはただの宣伝だけではない目的があったようだが、それは次回以降で。