武帝時、幸夫人尹婕妤。邢夫人號娙娥、眾人謂之「娙何」。娙何秩比中二千石、容華秩比二千石、婕妤秩比列侯。常從婕妤遷為皇后。
尹夫人與邢夫人同時並幸、有詔不得相見。尹夫人自請武帝、願望見邢夫人、帝許之。即令他夫人飾、從御者數十人、為邢夫人來前。尹夫人前見之、曰「此非邢夫人身也。」帝曰「何以言之?」對曰「視其身貌形狀、不足以當人主矣。」於是帝乃詔使邢夫人衣故衣、獨身來前。尹夫人望見之、曰「此真是也。」於是乃低頭俛而泣、自痛其不如也。
(『史記』巻四十九、外戚世家)
漢の武帝の寵姫に尹夫人、邢夫人という女性がいた。
尹夫人は皇后に次ぐ婕妤、邢夫人はさらにそれに次ぐ娙娥という地位にあった。第2夫人と第3夫人といったところか。
理由は明記されていないが、武帝はこのオキニの2人が出会わないように命じていた。ライバル関係の2人の関係が険悪になることを心配していたのだろうか。
だがある日尹夫人は邢夫人に会ってみたいと武帝へ望み、武帝はその願いを叶えてやった。
だが、武帝はここで他の夫人に邢夫人の衣装を着せ、大勢のお連れの者を引き連れて面会させてみた。
尹夫人は「陛下、ここには邢夫人はいません」と武帝に言い、武帝が「なぜ分かる?」と訊くと、「ここにいる方は陛下の后になれるような人ではありません」とダメ出し。
そこで武帝は本物の邢夫人を単独で改めて面会させてみたら、尹夫人は「この方こそ本当の邢夫人です」と答えた。
そこで邢夫人は自分が尹夫人には敵わないことを知り、平身低頭して泣き出したのだった。
アリがちな話といえばそうなんだろうが、妙に既視感があるな、と思ったのだが・・・これ、『千と千尋の神隠し』で出てきた構図じゃないか。