ちょっと前まで『漢書』武帝紀を見てきたので、もうこうなったらついでに『漢書』昭帝紀も同じように見ていこうじゃないか。
短命であまり印象が無い皇帝といえば昭帝だが、そんな可哀そうな側面以外も見えてくるかもしれないし。
孝昭皇帝、武帝少子也。
母曰趙祜礱、本以有奇異得幸、及生帝、亦奇異。語在外戚傳。
武帝末、戻太子敗、燕王旦・廣陵王胥行驕嫚、後元二年二月上疾病、遂立昭帝為太子、年八歳。
以侍中奉車都尉霍光為大司馬大將軍、受遺詔輔少主。明日、武帝崩。
戊辰、太子即皇帝位、謁高廟。
帝姉鄂邑公主益湯沐邑、為長公主、共養省中。
大將軍光秉政、領尚書事、車騎將軍金日磾・左將軍上官桀副焉。
夏六月、赦天下。
秋七月、有星孛于東方。
濟北王𥶡有罪、自殺。
賜長公主及宗室昆弟各有差。
追尊趙祜礱為皇太后、起雲陵。
冬、匈奴入朔方、殺略吏民。發軍屯西河、左將軍桀行北邊。
（『漢書』巻七、昭帝紀）
昭帝の母は趙氏。
孝武鉤弋趙祜礱、昭帝母也、家在河間。
武帝巡狩過河間、望氣者言此有奇女、天子亟使使召之。既至、女両手皆拳、上自披之、手即時伸。由是得幸、號曰拳夫人。
先是其父坐法宮刑、為中黄門、死長安、葬雍門。
拳夫人進為祜礱、居鉤弋宮、大有寵、太始三年生昭帝、號鉤弋子。任身十四月乃生、上曰「聞昔堯十四月而生、今鉤弋亦然。」乃命其所生門曰堯母門。
後衛太子敗、而燕王旦・廣陵王胥多過失、寵姫王夫人男齊懷王・李夫人男昌邑哀王皆蚤薨、鉤弋子年五六歳、壯大多知、上常言「類我」、又感其生與衆異、甚奇愛之、心欲立焉、以其年穉母少、恐女主顓恣亂國家、猶與久之。
鉤弋祜礱從幸甘泉、有過見譴、以憂死、因葬雲陽。後上疾病、乃立鉤弋子為皇太子。拜奉車都尉霍光為大司馬大將軍、輔少主。明日、帝崩。
（『漢書』巻九十七上、外戚伝上、鉤弋趙祜礱）
この趙氏は武帝が触れたら、生まれつき握りしめられていた手が開いたという不思議現象によって武帝に寵愛されたという女性であった。
そして、妊娠十四か月にして昭帝を産むという不思議現象もあったという。これについては不思議現象というよりはスキャンダルじゃないのかという気もしないでもないが。
上居甘泉宮、召畫工圖畫周公負成王也。於是左右羣臣知武帝意欲立少子也。
後數日、帝譴責鉤弋夫人。夫人脱簪珥叩頭。帝曰「引持去、送掖庭獄！」夫人還顧、帝曰「趣行、女不得活！」夫人死雲陽宮。時暴風揚塵、百姓感傷。使者夜持棺往葬之、封識其處。
其後帝閑居、問左右曰「人言云何？」左右對曰「人言且立其子、何去其母乎？」帝曰「然。是非兒曹愚人所知也。往古國家所以亂也、由主少母壯也。女主獨居驕蹇、淫亂自恣、莫能禁也。女不聞呂后邪？」故諸為武帝生子者、無男女、其母無不譴死、豈可謂非賢聖哉！昭然遠見、為後世計慮、固非淺聞愚儒之所及也。謚為「武」、豈虚哉！
（『史記』巻四十九、外戚世家、褚先生補）
武帝は昭帝を皇帝にするため、呂后のようなことにならないようにと敢えて実母趙氏を殺したのだという話が残っている。
妊娠十四か月の真実に気付いてしまったからなんじゃないかって思ってしまうが、まあとにかく昭帝は実母や外戚の後ろ盾がない状態で即位することになった事だけは確かである。
武帝が昭帝を皇太子にして２日後に武帝は死去、そしてその日に霍光が大司馬大将軍になっている。
霍光は霍去病の異母弟であり、長年武帝のそばにいたという。筆頭の執事のような存在だったのかもしれない。
それがいきなり衛青と同じ地位に就き、しかも「領尚書事」というこれまでに出てきた事のない職まで与えられたというのだから驚きである。
副となったという金日磾は馬何羅事件の最大の功労者、上官桀は李広利の大宛攻めに従軍し功を立てた人物なので、目に見える功績という点では霍光が一番地味なのだが、よほど武帝が評価する何かがあったのだろう。
