宰相の仕事

(丙)吉又嘗出、逢清道羣鬬者、死傷橫道、吉過之不問、掾史獨怪之。吉前行、逢人逐牛、牛喘吐舌。吉止駐、使騎吏問「逐牛行幾里矣?」掾史獨謂丞相前後失問、或以譏吉、吉曰「民鬬相殺傷、長安令・京兆尹職所當禁備逐捕、歳竟丞相課其殿最、奏行賞罰而已。宰相不親小事、非所當於道路問也。方春少陽用事、未可大熱、恐牛近行用暑故喘、此時氣失節、恐有所傷害也。三公典調和陰陽、職當憂、是以問之。」掾史乃服、以吉知大體。
(『漢書』巻七十四、丙吉伝)

前漢の丞相丙吉は、道端で死傷者が出ているのを見てもスルーしたが、夏でもないのに牛が暑さに喘いでいるのを見るとそれについて調べ始めた。



これは、傷害事件は別に担当者がいるから自分が直接関わる必要は無いが、異常気象の前兆を察知する事は宰相の仕事である、という職業理念からによるものであった。




宰相というものは森羅万象すべてを担当するのではない、という事らしい。