『潜夫論』を読んでみよう−辺議篇その4

http://d.hatena.ne.jp/T_S/20140915/1410706911の続き。


今邊陲搔擾、日放族禍、百姓晝夜望朝廷救己、而公卿以為費煩不可。徒竊笑之、是以晏子輕囷倉之蓄、而惜一杯之鑽何異。今但知愛見薄之錢穀、而不知未見之待民先也。知徭役出難動、而不知中國之待邊寧也。
(『潜夫論』辺議第二十三)

今、辺境は騒がしく、日々一族が皆殺しになるような禍を受けており、人々は日夜朝廷が自分たちを救ってくれることを待ち望んでいるが、宰相や大臣たちは費用がかかるからといってそれを認めないのである。



これは晏子が言うところの「米蔵の蓄えを軽視しておいて、一杯の飯を惜しむ」と何が違うのか?ホント、嫌な笑いしか出てこねぇよ。




今、ただ帳簿に載っている現金や食料を惜しむばかりで、未来の民が生み出す富については理解できず、徭役を増やしたりすることが難しいというのは分かっていても、中国は辺境に平和が訪れることによって安定するということを知らないのである。



いよいよヤバい方向に冴えわたる王符先生の筆。




王符先生によれば辺境を安んずることこそ中国全体の安寧につながる(これは『塩鉄論』などでも語られているそうなので、先生の独自研究というわけでもないらしい)ということで、涼州放棄により戦線縮小をするばかりの朝廷は目先のことしか見えない大馬鹿者、と言いたいようだ。



完全に朝廷のこれまでの政策を真っ向から否定し、為政者たちを誹謗中傷レベルに非難する王符先生。



先生はどうやら最初思っていたよりもずっとチャレンジャーだったようだ。