今にも降伏してきそうな劉禅の下で

魏延「ああ……その……なんだ…」

???「何か?」

魏延「いや…その参考までに聞きたいんだが…ちょっとした個人的好奇心なんだが、もし勝てなかったらどうするんだい?「魏」なんて取れないかも…いや…それよりも魏を下したとして皇帝がずるがしこい策略とか立てて韓信みたいになったとしたら…あんたはどう思って…そんな苦労を背負い込んでいるんだ?」

???「そうだな…私は「結果」だけを求めてはいない。「結果」だけを求めていると人は長安へ近道をしたがるものだ…近道した時真実を見失うかもしれない。ヤル気も次第に失せていく。大切なのは「洛陽に向かおうとする意思」だと思っている。向かおうとする意思さえあれば例え今回は北伐が失敗したとしてもいつかはたどり着くだろう?向かっているわけだからな…違うかね?」

魏延「うらやましいな…以前オレは…大将軍になりたいと思っていた…子供の頃から…ずっとりっぱな大将軍に…なりたかったんだ…。かつてあんたの様な「意思」を抱いていた事もあった…。でもダメにしちまった………オレって人間はな………くだらない男さ。なんだって途中で終わっちまう。いつだって途中になっちまう」


???「そんな事はないよ…魏延

魏延「え?…」

???「お前は立派にやってるじゃあないか…“意志”は同じだ…お前が先主に降伏したばかりの時抱いていたその“意志”は…今…お前のその心の中に再び戻っているのだよ…魏延

魏延「なんでオレの名を…知っているんだ?…そういや…あんた…前にどこかで会った事が…ある」


魏延「もう行かなくては…オレは皇帝の所に戻らなくては…!!」

???「忘れたのか魏延!?お前は費禕の口車に乗ってここに来たのだ。ここは漢中なんだ…もう戻る事はできない」

魏延「あ…あんたは…!!そうだ!!あんたはッ!!あんたはオレが燭台を落としたせいで死んだ…!!」


諸葛亮魏延…お前は立派にやったのだよ…そう…わたしが誇りに思うくらい立派にね…」