ショーウィンドウのトランペット

ショーウィンドウの向こう側のトランペットをじっと見つめる少年のために、見ず知らずの紳士がトランペットをプレゼントする・・・。

そんな話が三国時代にもあった。

楊俊字季才、河内獲嘉人也。受學陳留邊讓、讓器異之。・・・(中略)・・・本郡王象、少孤特、為人僕隸、年十七八、見使牧羊而私讀書、因被箠楚。俊嘉其才質、即贖象著家、聘娶立屋、然後與別。
(『三国志』巻二十三、楊俊伝)


河内の人、楊俊。
彼は曹操にぶち殺された辺譲を師とした人物。また若き日の司馬懿を「非常の人」と言ったことでも有名である。


彼はあるとき王象という奴隷の少年を知った。
彼は羊飼いをしながら密かに読書をし、そのせいで鞭打たれるという非凡な少年であった。

楊俊は彼の才能を見込んで身柄を買い受け、更に彼のために家と妻まで用意してやり、その上で彼と別れたのであった。


その後、王象は儒者として栄達し、曹丕の勅命による『皇覧』編集に携わるまでになった。



だが楊俊と王象には悲劇が待っていた。
曹丕の時代、楊俊は曹丕の怒りを買って死を待つ身となった。
彼に大恩ある王象は必死に助命嘆願したが、曹丕は最後まで折れることはなく、ついに楊俊は自殺した。

恩人を助けられなかった王象も、その落胆からか病気になって死んだという。



三国時代のショーウィンドウのトランペットは少々ビターテイストである。