広い三兄弟

夏四月、立代孝王玄孫之子如意為廣宗王、江都易王孫盱台侯宮為廣川王、廣川惠王曾孫倫為廣徳王。
(『漢書』平帝紀、元始二年)

王莽が権力を握った前漢平帝の時代。
王莽は新たに王を三人立てた。

  • 広宗王
  • 広川王
  • 広徳王

さて、なんか統一感があるようでチグハグではないだろうか。
「宗を広げる」、「徳を広げる」、ときて「川を広げる」・・・


実は、これはおそらく間違いなのである。

廣世
元始二年四月丁酉、王宮以易王庶孫盱眙侯子紹封、五年、王莽篡位、貶為公、明年廢。
(『漢書』諸侯王表)

こちらでは劉宮がなったのは「広世王」。
「世(世代、血筋)を広げる」なら、「広宗」「広徳」と対応する。
おそらくは「広世王」が正しいのだろう。


「世」という字を漢和辞典で調べてみれば、古字では「丗」と書いていたことがわかるだろう。
帝紀では「世」を古字で書いていたところ字形が「川」と似ていた上に、文章の直後に「広川王」が出てきたことに引きずられて「世」が「川」になってしまったのだと思われる。