陳寿の本心その5.5

花郁郁たる高陽里

 ……あの、これって曹操の視点=魏の視点で書かれた歴史書じゃないですよ?晋ですよ?曹操については、偉大な英雄であったと評価はしますし、魏武帝紀本編にはなるべく曹操の悪い面は書かないようにしてますけど、その代わり、他の部分に、曹操その人のマイナス面は散らして書いてあるんだけど……。

 ていうか、「魏を正統とみなす」ってのは、魏が正義って意味じゃなく、「正式な手続きを経て漢から帝位を譲り受けた」って意味であり、むしろ晋王朝としては、「魏から天命が去った」という魏の悪い面も当然書いてあるんだけど……。


この記事の本旨からは外れた部分からの引用になるのだけれど・・・。

むむ、「陳寿の本心その6」あたりに書こうと思っていたことがあらかた書いてあるような気がするぞ。


陳寿の『三国志』は引用にもあるように晋の時代に書かれている。
魏から禅譲という形であれ帝位を継いだ晋としては、魏王朝はあまり偉大であっては困る。
魏が晋に禅譲しなければいけない理由が無くなってしまうからだ。
だから魏を正統王朝として扱いつつも、「こんな悪行続けてた曹氏から司馬氏に早く交代して良かったなあ」と人々に思わせるくらいが晋王朝としては一番都合が良いのだ。
魏の歴代皇帝を絶賛するのも都合が悪いし、貶めすぎるのも都合が悪い。
陳寿の『三国志』が当時好評だった理由のひとつは、そういう「曹氏を悪役に描くサジ加減が絶妙だったから」じゃないかとも思う。