親不孝か否か

漫画や笑い話の類では、グータラ社員などが何度も親や祖父母、親族の忌引と称して休みを取り、親が5人も6人もいることになってしまった、なんて話が出てくることがある。



だが、昔の中国でそれをやるといきなり命が危ないというお話し。





桂陽人黄欽生父沒已久、詐服衰麻、言迎父喪。府曹先依律詐取父母卒棄市、(殷)仲堪乃曰「律詐取父母寧依敺詈法棄市。原此之旨、當以二親生存而膻言死沒、情事悖逆、忍所不當、故同之敺詈之科、正以大辟之刑。今欽生父實終沒、墓在舊邦、積年久遠、方詐服迎喪、以此為大妄耳。比之於父存言亡、相殊遠矣。」遂活之。
(『晋書』巻五十四、殷仲堪伝)

東晋の時代、殷仲堪が荊州刺史であったときのこと。



黄欽という人物が、既に父は死んでいたにも関わらず父の喪と称して忌引を取得した。



このことが露見すると、担当官は彼に死刑を求刑した。



「父母の喪と偽って忌引を取得した者は死刑」という律があったのである。




だが、殷仲堪は「その律は生きている父母の喪と偽った場合であり、既に死んでいる父母の喪と偽った場合にはそれには当たらない」と判断し、被告黄欽の罪を減じたという。





おそらく、生きている父母を死んだと偽るのは欺罔であるだけでなく親不孝の極みであるが、既に死んでいる父母の場合は欺罔ではあっても親不孝度はそこまでではない、という法理なのだろう。





我々も、嘘の忌引でクビが飛ばないように気を付けなければいけないのは同じであるが、現代の場合は父母の生死はあまり問われないと思うので注意が必要である。