ハンバーグ

帝王世紀云、「囚文王、文王之長子曰伯邑考質於殷、為紂御、紂烹為羹、賜文王曰『聖人當不食其子羹』。文王食之。紂曰『誰謂西伯聖者?食其子羹尚不知也』。」
(『史記』巻三、殷本紀注「正義」)

殷の紂王の時のこと。




次の時代の天子となるべき天命を受けた「受命の君」たる周の文王は、当然当時の天子である殷の紂王に捕えられ、長男の伯邑考は人質として紂王の御者にされた。




そこで紂王は一計を案じた




「もし周王が本当に次の天子になるような聖人だとしたら、息子の肉を食うような非道はやらないだろう」






そこで紂王は伯邑考さんをハンバーグシチューにし(比喩表現)、周王に振る舞ってみた。



食べるのを避けるようなら周王は聖人ということなので、紂王としては自分たちの地位のために周王を消すつもりなのだろう。




だが、周王はそのハンバーグシチューをハムッ、ハフハフ、ハフッ!!と食べてしまった。




紂王さんは「おいおい、全部食べちまったよ・・・」とドン引きし、自分の息子を食したことも分からない奴が聖人なはずがないと安心したのだという。





もちろん、周王はその企みに気付いたからこそ、敢えて食べることで虎口を逃れようとしたのであろう。





なんというか、「結果としてわが子を犠牲にして自分が生き延びる」*1というのは古代の天下人や聖人・賢人にはしばしばみられるような気がする(あくまでも印象)。




漢の劉邦の有名なアレはもちろん、劉備とか曹操なんかも同じ視点からそういうストーリーが史家によって構成されている、的なことがあったりなかったりしないだろうか。




*1:周王の場合は既に死んでいるのでちょっと違うが。