孫晧の趣味、あるいは渓谷から丞相が生まれるの巻


連日の「元ネタはツイッター」。



呉録曰、(孫)晧毎於會、因酒酣、輒令侍臣嘲謔公卿、以為笑樂。
萬紣既為左丞相、(王)蕃嘲紣曰「魚潛於淵、出水煦沫。何則?物有本性、不可膻處非分也。紣出自谿谷、羊質虎皮、虚受光赫之寵、跨越三九之位、犬馬猶能識養、將何以報厚施乎!」紣曰「唐虞之朝無謬舉之才、造父之門無駑蹇之質、蕃上誣明選、下訕腊幹、何傷於日月、適多見其不知量耳。」
(『三国志』巻六十五、王蕃伝注引『呉録』)

孫晧は宴会芸として侍従に大臣をコケにするよう命じて笑うという高尚な趣味をお持ちだったらしい。曹丕と気が合いそうだ。




そこで王蕃は左丞相になっていた万紣をコケにした。

おそらくそうするように孫晧様が命じたのだろう。



「淵に潜む魚が水を出ても煮魚になるだけですよね?万物には本性っていうのがあるんです。万紣どのは渓谷で羊が虎皮を着てたようなヤツのくせに陛下の寵愛を受けて分不相応な三公九卿以上の地位におりますね。犬や馬でさえ養われていることを認知できるというのに、このお人はどうやってその恩に報いることができるんでしょうねえ?」


万紣はどうも異民族系の出自であったように見える。
卑しい身分からの抜擢であったのか、そこを突かれているようだ。
(たぶん)命じられている割にはなかなか容赦ない。マジストレイツォ



しかし万紣は王蕃に言い返した。


「陛下の御世の人材抜擢は古の帝王のように何一つ問題はありません。王蕃さんは陛下を誹謗した上に見識の無さを世間に知らしめているだけですねえ・・・?」



どうも万紣は卑しい身分から抜擢されたらしい。


(陸)凱上疏曰・・・(中略)・・・臣聞宰相國之柱也、不可不彊、是故漢有蕭・曹之佐、先帝有顧・歩之相。而萬紣瑣才凡庸之質、昔從家隸、超歩紫闥、於紣已豐、於器已溢、而陛下愛其細介、不訪大趣、榮以尊輔、越尚舊臣。賢良憤惋、智士赫咤、是不遵先帝三也。・・・(後略)
(『三国志』巻六十一、陸凱伝)



また、万紣についてはこんな話もある。



陸遜の一族である陸凱は孫晧にこんな諫言をしている。


「宰相というのは国の柱であす。漢には蕭何・曹参がいて、呉にも顧雍・歩騭がおりました。しかし、万紣は凡才でしかなく、かつては奴隷であったのにもかかわらず、大抜擢を受けて高貴な身分となりました。彼は十分に富貴となり、既に彼の器を超えているというのに、なおも陛下は彼を寵愛して旧臣を超える地位に就けており、名士たちは憤慨しております。これは陛下が先帝の政治に従っていない点の三つめでございます」



ここでも万紣は大貴族といえる陸凱から奴隷出身と言われている。