『漢書』王莽伝を読んでみよう:下その22

その21の続き。


莽夢長樂宮銅人五枚起立、莽惡之、念銅人銘有「皇帝初兼天下」之文、即使尚方工鐫滅所夢銅人膺文。又感漢高廟神靈、遣虎賁武士入高廟、拔劍四面提撃、斧壞戸牖、桃湯赭鞭鞭灑屋壁、令輕車校尉居其中、又令中軍北壘居高寢。
或言黄帝時建華蓋以登僊、莽乃造華蓋九重、高八丈一尺、金瑵羽葆、載以祕機四輪車、駕六馬、力士三百人黄衣幘、車上人撃鼓、輓者皆呼「登僊」。莽出、令在前。百官竊言「此似輭車、非僊物也。」
(『漢書』巻九十九下、王莽伝下)

王莽は長楽宮の銅像五体が立ちあがるという夢を見たため不快に思い、銅像の銘文に「皇帝が初めて天下を統一した」という文があるのを思い出し、尚方の職人に銅像の胸部の文章を削り取らせた。
また漢の高祖廟の神霊を感じたため、虎賁の武人たちを高祖廟に派遣し、剣で四方八方を斬りつけ、斧で戸を破壊し、桃のエキスの入ったお湯や赤い鞭で屋根や壁を洗い流し、軽車校尉に高祖廟に駐屯させ、また中軍の北の土塁の兵士を高祖廟の霊屋に駐屯させた。



ある者が黄帝の時は花の天蓋を建てて天に登り仙人になったと述べたため、王莽は九重の花の天蓋を作らせた。高さは八丈一尺、金の先端や羽根で作った飾りを付け、からくり仕掛けの四輪車に載せ、六頭の馬に引かせ、黄色い衣服と頭巾を着けた怪力の士三百人を随行させ、車に乗っている者は太鼓を叩き、引く者全員に「天に登って仙人になる」と言わせた。王莽の外出時には王莽の前を行かせた。
官僚たちは「これは霊柩車に似ている。仙人の馬車ではないな」とひそかに言い合った。



王莽、漢の高祖が化けて出るのは許さないの巻。




銅像が動き出す夢を見た」とか「高祖の神霊を感じる」とか言い出したわけで、周囲の者は「あっ・・・」と察し始めたかもしれない。





高さ八丈一尺ってことは20メートル近いのか?なんだか相当巨大な代物だったんじゃなかろうか。


このご自慢の巨大な花笠が裏で「霊柩車wwwwww」とか言われていたのかと思うと王莽が少し不憫にも思えてくる。