呪マース

「公以此無種矣」(『史記』汲鄭列伝)

前漢武帝の時、廷尉になった酷吏張湯に対して汲黯はこう言った。
「こんなことをしたお前は一族が絶えるであろう」
とんでもない呪いの言葉である。

張湯は後に失脚して死に、なるほど汲黯の言ったとおりになりました・・・というオチなのは『史記』まで。

張湯の子の張安世は武帝晩期に側近として使われ、昭帝の時には将軍となり朝廷の重鎮となった。張安世の兄張賀は宦官にされたが後宮の高官となり、のちの宣帝を養った功績を称えられた。
この張氏の家系は前漢はおろか後漢中期まで代々列侯の地位を失わず、漢代でもっとも栄えた家となったのである。
史記』は各ストーリー内でほとんどの場合ちゃんとオチをつけているのだが、ここまでそのオチを現実が裏切った例は珍しい。