下馬

傅子曰・・・(中略)・・・常出軍、行經麥中、令「士卒無敗麥、犯者死」。騎士皆下馬、付麥以相持、於是太祖馬騰入麥中、勑主簿議罪。主簿對以春秋之義、罰不加於尊。太祖曰「制法而自犯之、何以帥下?然孤為軍帥、不可自殺、請自刑。」因援劍割髮以置地。
(『三国志』巻一、武帝紀注引『傅子』曹瞞傳曰)


曹操の馬が麦を踏むという死罪を自ら犯したので髪を切った件、よくよく考えると、兵士たちはみな軍令を守るためにわざわざ下馬していたのに、曹操自身は下馬しなかったことによって起こっているんだな・・・。



この話、一見すると軍令を自分にも平等に施そうという精神に見えるが、一方で最初から自分は例外としていて、死罪になるなんて思ってもいなかった、という話とも、自分は兵卒とは違うと思いあがっている(まあ、身分の違いがあるから実際違うのだが、例の軍令はどんな身分にも適用する前提だったはずなのに、自分は下馬していないのである)といった話とも取れるんじゃないだろうか。




実際のところ、部下が曹操が死ぬべきだとか答えるわけがないし、「自分は将だから死ぬわけにはいかない」なんてのは言い訳にも見える。つまりこの辺の話は茶番ではないか?




「自分は法の例外なのだ」という、実は法家的な思想とは少し違っていそうな前提が、曹操の中にはあったのではないのか?