対呉利権

世語曰、(王)經字彦緯、初為江夏太守。大將軍曹爽附絹二十匹令交市于呉、經不發書、棄官歸。
(『三国志』巻九、夏侯玄伝注引『世語』)

面白いな。



ここで曹爽は江夏太守になった王経に対して絹を託し、「呉と交易してくれ」と文書で頼んでいるわけだ。




これは公式な命令ではなく私的なものだろう。つまり「密かにこの絹を呉に売ってくれ」という意味だ。



王経はその文書を開くこともせずに官を捨てたというから、そのような指図には従わない、と表明したのだろう。





これってつまり、魏にとって呉との国境線で呉と交易をすると儲かる、という実態があったということなんじゃないか。




太守に密かに頼むというのは、交易できる制限などがあったから(それを権力をバックにして無理に交易に入ろうとした、ということか)なのだろうが、国境の太守が敵国との交易で儲けられるなどという事態は、敵国呉を倒そうという国是からすれば大きな矛盾ではなかろうか。



呉を滅ぼさないことによって利権が生じている、ということではないか。