警戒色

於官屬掾史、務掩過揚善。(丙)吉馭吏耆酒、數逋蕩、嘗從吉出、醉歐丞相車上。西曹主吏白欲斥之、吉曰「以醉飽之失去士、使此人將復何所容?西曹地忍之、此不過汚丞相車茵耳。」遂不去也。此馭吏邊郡人、習知邊塞發犇命警備事、嘗出、適見驛騎持赤白囊、邊郡發犇命書馳來至。馭吏因隨驛騎至公車刺取、 知虜入雲中・代郡、遽歸府見吉白状、因曰「恐虜所入邊郡、二千石長吏有老病不任兵馬者、宜可豫視。」吉善其言、召東曹案邊長吏、瑣科條其人。未已、詔召丞相・御史、問以虜所入郡吏、吉具對。御史大夫卒遽不能詳知、以得譴讓。而吉見謂憂邊思職、馭吏力也。吉乃歎曰「士亡不可容、能各有所長。嚮使丞相不先聞馭吏言、何見勞勉之有?」掾史繇是益賢吉。
(『漢書』巻七十四、丙吉伝)

前漢宣帝の時代、魏相の次の丞相となった丙吉。
彼は宣帝の命の恩人ということの方が有名だが、彼もまた名宰相として知られる存在であった。


丙吉の部下の御者の吏は酒飲みで、ある時二日酔いで丞相を馬車に乗せている時に馬車の上でゲロってしまった。
丞相府の属官はもちろん彼を排斥しようとしたが、丙吉は許してやった。

その酒飲みは辺境の出身で、ある日辺境から緊急文書をもたらす早馬が来るのを見かけると、丙吉に「辺境に匈奴が来襲したみたいなので、辺境の長官の人事とかあらかじめ考えておいたほうがイイっすよ」と進言した。


その後すぐ皇帝は丞相と御史大夫を呼び出し、辺境への匈奴来襲に関して諮問したが、酒飲みの進言のお蔭で予習ばっちりだった丞相丙吉はすらすら答え、何も備えていなかった御史大夫は答えられなかったため皇帝に怒られたという。


「どんな人にも長所はあるものだ」というちょっといい話。




というのは前フリ。


太字で書いた「適見驛騎持赤白囊、邊郡發犇命書馳來至」が本題。


早馬が辺境からもたらした「奔命書」と呼ばれる文書は赤と白の袋に入れられていたという。
特に注意、警戒を要する緊急文書を示すカラーリングなのだと思われる。
この色合いによって、中身を見るまでもなく緊急かつ重大な情報だとわかるということだろう。
現代なら黒と黄色とか白とオレンジとかを使うのだと思われる。