心にもない

華嶠譜敍曰、文帝受禪、朝臣三公已下並受爵位。(華)歆以形色忤時、徙為司徒而不進爵。魏文帝久不懌、以問尚書陳羣曰「我應天受禪、百辟羣后莫不人人悦喜、形于聲色、而相國及公獨有不怡者、何也?」羣起離席長跪曰「臣與相國曾臣漢朝、心雖悦喜、義形其色、亦懼陛下實應且憎。」帝大悦、遂重異之。
(『三国志』巻十三、華歆伝注引華嶠『譜敍』)

曹丕が皇帝になった後、魏王朝の司徒になった魏国相国華歆は不満げな表情をしていたらしく、皇帝曹丕の不興を買っていた。



そこで、同じく不満げな表情であったらしい陳群に「ワイが天命に応じて禅譲を受けて皇帝になり、天下万民みなが大喜びしているのに、お前らだけはどうしてそんな感じなわけ?」と聞いてみた。



陳群は「わたしたちは漢の臣下だったので、心の中では喜んでいるのですが、漢への義理として不満な気持ちを出しているのです」と答えたそうな。曹丕はその解答に満足したとのこと。




つまり、陳群と華歆は漢に対しての「お義理」で複雑な表情をしていた、ということらしい。まあ、それもまた言い訳かもしれないが。




本心の通りの言動を常にできるわけではないというのは現代社会でもありがちなことではあるが、彼らは士大夫的な義理を尊重するために直接の上司の不興を買うことも覚悟しなければならなかったということか。