建安十五年十二月己亥令を読んでみよう:その4

その3の続き。





孤祖父以至孤身、皆當親重之任、可謂見信者矣、以及子桓兄弟、過于三世矣。
孤非徒對諸君説此也、常以語妻妾、皆令深知此意。孤謂之言『顧我萬年之後、汝曹皆當出嫁、欲令傳道我心、使他人皆知之。』孤此言皆肝鬲之要也。
所以勤勤懇懇敍心腹者、見周公有金縢之書以自明、恐人不信之故。
(『三国志』巻一、武帝紀、建安十五年、注引『魏武故事』)

私の祖父から私に至るまで皆天子に親しく重んじられてきて、信用されてきたと言うべきであり、我が子子桓(曹丕)ら兄弟に至っては三代以上になる。
私はこのことを諸君らにだけ言っているのではなく、常々私の妻妾たちにも語っており、皆に我が意を知らしめている。私は彼女らにこう言っている。「私が世を去ったならばお前たちは再婚せよ。再婚先で私の心を他の者たちに伝えてほしいのだ」と。これこそが私の最も大切な気持ちなのだ。
このことを懇懇と説いてきたのは、周公旦が『金縢』を著して自らの意を明らかにしたように、私の気持ちが信用されないのではないかと恐れたからである。

曹操は自分は蒙恬以上に代々主君に忠誠を誓ってきた一族だと言い、この「すっかり弱体化した天子を強大な自分がお守りする」という気持ちは前々から家族にも伝えてきたのだ、と主張する。



「誤解を恐れて詳しく解説した」との言葉からは、逆に当時の人々に曹操を「誤解」している者が少なからず存在したことをうかがわせる。まあ、こんな自己弁護に見える言葉の連発では彼らの「誤解」はあまり解けないんじゃないかという気もするが・・・。




その5へ続く。多分次がラスト。