尊い犠牲

かの曹操の子に曹沖と言う者がいる。



曹操が十代前半にして後継者にしたがったという知恵者であったというが、若くして死んでしまった。



だがよく考えてみると、曹沖を後継者にしたがった時、長子曹丕曹操の列侯の世子(後継ぎ)だったし、いくつかの戦いにも従軍していて、世間的にも後継ぎ候補筆頭と考えられていた事は明らかだろう。


また、曹彰曹植も曹沖より年上。もし曹沖が後継者になるとしたら、この卞氏を母とする3人はどう思うのか。


曹丕は言うまでもないが、弟たちも、そして母卞氏も、自分たちの血統の危機だと感じて抵抗を試みる事だろう。



まして長子が後を継ぐのが一般的とされていた時代であるから、曹丕を後継者から外した場合に、曹操軍閥内にいったいどんな混乱が起こるのか。


また曹丕らの母卞氏と自分の母環氏の間にも暗闘が発生する事はまず間違いないだろう。少なくともどちらか一方はただでは済まない。



曹沖が本当に年にも似ない知恵者であったとしたら、そういった曹操軍閥の情勢や、万一自分が後継者に立てられた時に起こるであろう問題が頭をよぎったのではなかろうか*1




そうなると、曹沖は父曹操の覇業のため、今の曹操軍閥の未来のため、また自分の生母環氏や育ての母卞氏、兄弟たちのため、何をどうすれば軍閥も家も二分し、血を見るであろう騒動を起こさないで済むか、という事も思いつく事だろう。




結果、曹沖は早死にしてしまうのだったが、確かにこれによって曹操軍閥の分裂は避けられたと言えよう。





という妄想。





*1:かの賈詡との問答を見るに、父曹操はこういう視点はあまり意識していないように思える。