仲長統『昌言』理乱篇を読んでみよう:その3

その2(https://t-s.hatenablog.com/entry/2020/08/12/000100)の続き。





彼後嗣之愚主、見天下莫敢與之違、自謂若天地之不可亡也、乃奔其私嗜、騁其邪欲、君臣宣淫、上下同惡。目極角觝之觀、耳窮鄭衛之聲。入則耽於婦人、出則馳於田獵。荒廢庶政、弃亡人物、澶漫彌流、無所底極。信任親愛者、盡佞諂容説之人也。寵貴隆豐者、盡后妃姫妾之家也。使餓狼守庖廚、飢虎牧牢豚、遂至熬天下之脂膏、斲生人之骨髓。怨毒無聊、禍亂並起、中國擾攘、四夷侵叛、土崩瓦解、一朝而去。昔之為我哺乳之子孫者、今盡是我飲血之寇讎也。至於運徙埶去、猶不覺悟者、豈非富貴生不仁、沈溺致愚疾邪?存亡以之迭代、政亂從此周復、天道常然之大數也。
(『後漢書』列伝第三十九、仲長統伝)


その後の後継ぎが愚か者であると、天下が自分に逆らわないのを見て天地が滅ぶことがないようなものだと思い込んで私欲に走り、君臣ともに放蕩や悪事を行うようになる。




目は闘技場の争いを楽しみ、耳は鄭・衛の音楽を聴き、宮殿に入っては婦人とハッスルし、外に出ては狩猟に勤しむ。政治は荒廃し、心ある人々は逃げ去り、底が抜けたかのように好き放題するようになる。信任するのはおべっか使い、重用するのは后や寵姫の親族となる。



これは飢えた狼に台所を守らせ、腹ペコ虎に豚を飼育させるようなものである。最後には天下の豊かさを喰らいつくし、人々に害を及ぼす事になるだろう。恨みが渦巻き、反乱が続発し、中原に争いが起こり、四方の異民族が来寇し、ついには一朝にして王朝は瓦解するだろう。昔は慈しみ育てていた者の子孫が、こちらの血をすする仇敵になるのである。



このように天命が去ってしまってもそれに気づかないのは、富貴が非情を生み、耽溺が愚かな行いに至るからであろう。



王朝の存亡はこのように巡り、政治と混乱はこのように移り変わる。天道の運行というのはこのようになっているのだ。






今度は王朝が潰れる時の事を記す。天命を受けた王朝はこうやって樹立され、継続し、いずれは滅んでいく、という世界観である。