その４４（https://t-s.hatenablog.com/entry/2019/11/18/000100）の続き。
九年春正月壬申朔、日有蝕之。詔曰「興化之本、由政平訟理也。二千石長吏不能勤恤人隠、而輕挾私故、興長刑獄、又多貪濁、煩撓百姓。其敕刺史二千石糾其穢濁、舉其公清、有司議其黜陟。令内外羣官舉清能、拔寒素。」
江東四郡地震。
二月、尚書右僕射・陽夏侯胡奮卒。以尚書朱整為尚書右僕射。
三月丁丑、皇后親桑于西郊、賜帛各有差。
壬辰、初并二社為一。
夏四月、江南郡國八地震。隴西隕霜、傷宿麥。
五月、義陽王奇有罪、黜為三縱亭侯。
詔内外羣官舉守令之才。
六月庚子朔、日有蝕之。
徙章武王威為義陽王。
郡國三十二大旱、傷麥。
秋八月壬子、星隕如雨。
詔郡國五歳刑以下決遣、無留庶獄。
九月、東夷七國詣校尉内附。
郡國二十四螟。
冬十二月癸卯、立河間平王洪子英為章武王。
戊申、青龍・黄龍各一見于魯國。
（『晋書』巻三、武帝紀）
太康９年。
胡奮死す。
胡貴嬪名芳。父奮、別有傳。
泰始九年、帝多簡良家子女以充内職、自擇其美者以絳紗繫臂。而芳既入選、下殿號泣。左右止之曰「陛下聞聲。」芳曰「死且不畏、何畏陛下！」帝遣洛陽令司馬肇策拜芳為貴嬪。帝毎有顧問、不飾言辭、率爾而答、進退方雅。
時帝多内寵、平呉之後復納孫晧宮人數千、自此掖庭殆將萬人。而並寵者甚衆、帝莫知所適、常乗羊車、恣其所之、至便宴寢。宮人乃取竹葉插戸、以鹽汁灑地、而引帝車。
然芳最蒙愛幸、殆有專房之寵焉、侍御服飾亞于皇后。帝嘗與之摴蒱、爭矢、遂傷上指。帝怒曰「此固將種也！」芳對曰「北伐公孫、西距諸葛、非將種而何？」帝甚有慚色。芳生武安公主。
（『晋書』巻三十一、后妃伝上）
胡奮の娘胡芳は司馬炎の寵姫であった。
司馬炎はこの胡芳に指を怪我させられた時に「この武人の娘が」と罵倒したが、胡芳は「公孫淵を征伐したり、諸葛亮を防いだりした方も武人でしょう」と祖父司馬懿を引き合いに出して言い返した。つまりお前も武人の孫だろうという事だ。戦場に出る者を下に見る風潮があったのかもしれない。
前漢但置官社而無官稷、王莽置官稷、後復省。故漢至魏但太社有稷、而官社無稷、故常二社一稷也。
晉初仍魏、無所增損。至太康九年、改建宗廟、而社稷壇與廟倶徙。
（『晋書』巻十九、礼志上）
「二社」というのは、大地を祀る「社」には領民のための社と君主自身のための社の二つを立てるという制度があったという事らしい。
弈至黃門郎、先望卒。整亦早亡。以弈子奇襲爵。奇亦好畜聚、不知紀極、遣三部使到交廣商貨、為有司所奏、太康九年、詔貶為三縱亭侯。更以章武王威為望嗣。後威誅、復立奇為棘陽王以嗣望。
（『晋書』巻三十七、義陽成王望伝）
義陽王司馬奇は義陽王司馬望の孫。司馬望の嫡子司馬弈が司馬望より先に死んだため、司馬弈の子であった司馬奇が義陽王を継いでいた。司馬奇は貨殖をやりすぎて足を踏み外した。
ちなみに章武王司馬威も司馬望の孫だが、こちらは「狂暴」とされ、後に恵帝から皇帝の印璽を奪い取った。
河間平王司馬洪というのは司馬望の子。
河間平王洪字孔業、出繼叔父昌武亭侯遺。仕魏、歴位典農中郎將・原武太守、封襄賁男。武帝受禪、封河間王。立十二年、咸寧二年薨。
二子、威・混。威嗣、徙封章武。其後威既繼義陽王望、更立混為洪嗣。混歴位散騎常侍、薨。
（『晋書』巻三十七、河間平王洪伝）
この時に章武王になったと思われるのは司馬洪の列伝によると司馬混。「英」は誤りか同一人物の一名か。
