『漢紀』高祖皇帝紀を読んでみよう:その33

その32(http://d.hatena.ne.jp/T_S/20181211/1544454167)の続き。





荀悦曰、夫立策決勝之術、其要有三。一曰形。二曰勢。三曰情。形者言其大體得失之數也。勢者言其臨時之宜也、進退之機也。情者言其心志可否之意也。故策同事等而功殊者何。三術不同也。
初、張耳・陳餘説陳渉以復六國、自為樹黨。酈生亦説漢王。所以説者同、而得失異者。陳渉之起也、天下皆欲亡秦。而楚・漢之分、未有所定、時天下未必欲亡項也。且項羽率從六國、攻滅彊秦之時勢則不能矣。故立六國於陳渉、所謂多己之黨、而益秦之敵也。且陳渉未能專天下之地也、所謂取非其有以與人、行虚惠而獲實福也。立六國于漢王、所謂割己之有以資敵。設虚名而受實禍也。此同事而異形也。及宋義待秦・趙之斃、與昔卞莊刺虎同説者也。施之戰國之時、鄰國相攻、無臨時之急、則可也。戰國之立、其日久矣。一戰勝敗、未必以存亡也。其勢非能急於亡敵國也、進乗利、退自保。故累力待時、乗敵之斃、其勢然也。今楚・趙所起、其與秦勢不並立。安危之機、呼吸成變。進則成功、退則受禍。此同事而異勢者也。伐趙之役、韓信軍于泜水之上、而趙不能敗。彭城之難、漢王戰于濉水之上、士卒皆赴入濉水、而楚兵大勝。何則。趙兵出國迎戰、見可而進、知難而退、懷内顧之心、無必死之計。韓信軍孤在水上、士卒必死、無有二心。此信之所以勝也。漢王深入敵國、飲酒高會、士卒逸豫、戰心不固。楚以彊大之威、而喪其國都、項羽自外而入、士卒皆有憤激之氣。救敗赴亡之急、以決一旦之命。此漢之所以敗也。且韓信選精兵以守、而趙以内顧之士攻之。項羽選精兵以攻、而漢以怠惰之卒應之。此同事而異情者也。
故曰、權不可預設、變不可先圖。與時遷移、應物變化、設策之機也。
(『漢紀』高祖皇帝紀巻第二)


やっている事は同じように見えても、実際にはそれぞれの事情や策などによって結果は変わってしまうのだ、という荀悦の論。



張耳・陳余が陳勝に六国の王の末裔を立てるべきと進言した時は打倒秦という目的が一致していたから味方を増やす意味があったが、酈食其の策の時は必ずしも項羽を打倒しなければいけないとまで思われていないから、六国の末裔も劉邦に味方するとは限らない、というところか。




あるいは、ここの論は荀悦そして献帝が置かれた状況から、何かひとこと言わずにはおれなかったのかもしれないが、具体的にそれが何なのかまでは分からない。