発言ギリギリアウト

太祖少機警、有權數、而任俠放蕩、不治行業、故世人未之奇也。
惟梁國橋玄南陽何顒異焉。玄謂太祖曰「天下將亂、非命世之才不能濟也、能安之者、其在君乎!」
(『三国志』巻一、武帝紀)

曹操は若い時に橋玄に「天下が混乱しようとしている。天命を受けてこの世に生まれた才能の持ち主にしか救うことは出来ないだろう。天下を安んじることができるのは君であろうか!」といったことを言われたのだ、と記録されている。




確かに当時の後漢王朝は末期的とも言える雰囲気が漂っていたとは思われるが、それでも時期的に霊帝死後の混乱もその前の黄巾の乱も勃発する前と考えると、天命を受けた者が混乱を治めるという予言はかなり攻めた発言ではなかろうか。




天命を受けた者が今の王朝の混乱を収拾するというのは漢の高祖劉邦や世祖の所業ということであり、今の王朝は終わる、と言っているように聞こえる。




初、(何)顒見曹操、歎曰「漢家將亡、安天下者必此人也。」操以是嘉之。嘗稱潁川荀紣王佐之器。
(『後漢書』列伝第五十七、党錮列伝、何顒)


曹操を評価したというもう一人の何顒は、上記によるともっと踏み込んで「漢は滅ぶだろう」と言っている。





つまり、曹操は漢に早々と見切りをつけた人から「もう漢は滅ぶだろうけど、こいつが次の天下人になるんじゃないか」みたいに思われたのだ、という、良く考えたらちょっと怖い話になっているではないか。





結果的に正しい分析をしていたわけだが、この当時に人に聞かれて通報されたら首が物理的な意味で飛ぶギリギリアウトな発言じゃなかろうか。