『漢書』王莽伝を読んでみよう:中その17

その16の続き。


置五威司命、中城・四關將軍。司命司上公以下、中城主十二城門。
策命統睦侯陳崇曰「咨爾崇。夫不用命者、亂之原也。大姦猾者、賊之本也。鑄偽金錢者、妨寶貨之道也。驕奢踰制者、兇害之端也。漏泄省中及尚書事者、『機事不密則害成』也。拜爵王庭、謝恩私門者、祿去公室、政從亡矣。凡此六條、國之綱紀。是用建爾作司命、『柔亦不茹、剛亦不吐、不侮鰥寡、不畏強圉』、帝命帥繇、統睦于朝。」
命説符侯崔發曰「『重門撃𣔳、以待暴客。』女作五威中城將軍、中徳既成、天下説符。」
命明威侯王級曰「繞霤之固、南當荊楚。女作五威前關將軍、振武奮衛、明威于前。」
命尉睦侯王嘉曰「羊頭之阸、北當趙燕。女作五威後關將軍、壼口捶㧖、尉睦于後。」
命掌威侯王奇曰「肴黽之險、東當鄭衛。女作五威左關將軍、函谷批難、掌威于左。」
命懷羌子王福曰「汧隴之阻、西當戎狄。女作五威右關將軍、成固據守、懷羌于右。」
又遣諫大夫五十人分鑄錢於郡國。
是歳、長安狂女子碧呼道中曰「高皇帝大怒、趣歸我國。不者、九月必殺汝!」莽收捕殺之。治者掌寇大夫陳成自免去官。
真定劉都等謀舉兵、發覺、皆誅。真定・常山大雨雹。
(『漢書』巻九十九中、王莽伝中)

五威司命、中城将軍、四関将軍を置いた。司命は上公以下を司り、中城は十二の城門を管轄した。



統睦侯陳崇を策書により命じた。「ああ汝崇よ。命に従わない者は乱の発生源である。ずる賢い者は犯罪の原因である。偽の金や銭を鋳造するのは貨幣経済を妨げることである。驕りたかぶって制度を超えるのは凶行の始まりである。皇帝や尚書の機密を漏らすのは『易経』にある「機密が守られなければ害がある」というものである。公に爵位を受けながら私的な恩を感じるようでは、王朝から天の幸いが失われ、政治が滅ぶ前兆である。これら六つの事柄は朝廷の綱紀である。それゆえに汝を司命に命じ、『詩経』に「柔らかくても食べず、固くても吐き出さず、やもめや寡婦を侮らず、強い者も恐れない」とあるように、皇帝の命令により、朝廷の心を一つにせよ」



説符侯崔発を策書により命じた。「『易経』に「門を叩いて乱暴な敵を待ち受ける」という。汝を五威中城将軍に命じる。中庸の徳が完成し、天下が天の予兆を喜ぶようにせよ」



明威侯王級を策書により命じた。「四方を取り囲まれた堅固な土地、南の荊・楚の地に当たらせる。汝を五威前関将軍に命じる。武を奮って守り、前に威光を明らかにせよ」



尉睦侯王嘉を策書により命じた。「羊頭山の守り、北の趙・燕に当たらせる。汝を五威後関将軍に命じる。壺口山に拠って後ろで抑えて一つにせよ」



掌威侯王奇を策書により命じた。「肴山・黽池の険しさ、東の鄭・衛に当たらせる。汝を五威左関将軍に命じる。函谷関を閉じて難をはねのけ、左に威光を司れ」



懐羌子王福を策書により命じた。「汧水・隴山の天険、西の異民族たちに当たらせる。汝を五威右関将軍に命じる。固く守り、右に羌を手懐けよ」



また諫大夫五十人を分担して派遣し、郡国で銭を鋳造させた。




この年、長安の碧という名前の正気を失った女性が道で「高皇帝がお怒りだ!早く自分の国に帰れ!そうでなければ九月に汝を殺すであろう!」と叫んだ。王莽はその女性を捕えて殺した。取り調べに当たった掌寇大夫陳成は自ら罪を申し出て辞職した。



真定の劉都らが反乱を企てたが発覚して殺された。真定・常山で雹がたくさん降り注いだ。


司命と五威中城将軍・四関将軍を命じた。



司命はどうやら中央の諸官を監督する官のように思われる。任命された陳崇は漢の時代から司直などの監察官に従事していたようなので、同じ職務を与えられたということかもしれない。





謎の女性碧についてだが、この予言めいた言葉の結果どうなったかというと・・・。たぶん、このシリーズの最後の最後の方で答えを書くことになるだろう。