司馬遷の書を読んでみよう6

その5(http://d.hatena.ne.jp/T_S/20160615/1465918659)の続き。今回は短め。



且事本末未易明也。僕少負不羈之才、長無郷曲之譽、主上幸以先人之故、使得奉薄技、出入周衛之中。僕以為戴盆何以望天、故絶賓客之知、忘室家之業、日夜思竭其不肖之材力、務壹心營職、以求親媚於主上。而事乃有大謬不然者。
(『漢書』巻六十二、司馬遷伝)

それに事の次第は簡単には明らかにできるものではない。


僕は若い頃は束縛されない才能を持ったが、成長しても郷里で評判になるわけでもなかった。それでも陛下は父祖のお蔭で才能に乏しい私を取り立てて宿衛の任に当たることとなった。


僕は「お盆を頭に載せては天を見上げることはできない」と思って賓客との付き合いをやめ、家のことも顧みず、日夜平凡な能力を出し尽くして一心に仕事に励んで陛下のお褒めに預かろうとしていた。


しかし、それは大いなる誤りであった。





司馬遷は若き日の自分について述懐する。



それによると、若い頃は武帝の近臣としての仕事に専心していたのだ、という。





官僚、しかも皇帝側近としての司馬遷というある種新鮮さのある人物像であるが、しかしどうやら今の司馬遷はその時の自分に否定的なようだ(このあと起こったことを考えるともっともなことだ)。



これには一種の修辞や話を「盛った」部分もあっただろうが、若き日の彼が郎中となり西南夷への使者となったことは事実なので、そういった時期のことを述べているのだろう。