司馬遷の書を読んでみよう3

その2(http://d.hatena.ne.jp/T_S/20160611/1465574852)の続き。



書辭宜答、會東從上來、又迫賤事、相見日淺、卒卒無須臾之間得竭指意。今少卿抱不測之罪、渉旬月、迫季冬、僕又薄從上上雍、恐卒然不可諱。是僕終已不得舒憤懣以曉左右、則長逝者魂魄私恨無窮。請略陳固陋。闕然不報、幸勿過。
(『漢書』巻六十二、司馬遷伝)

送られた手紙には返事しなければいけなかったのだが、ちょうど陛下に従って東へ移動することになったり、雑務に追われたりしており、また対面してからそれほど経っていない時期だったため、僕の考えを述べる機会が持てないでいた。


しかし今、少卿は思いもよらぬ罪状があり、取り調べの期限が迫っている。僕もまた陛下の雍への行幸に同行しなければならず、もしかしたら取り返しのつかないことが起きてしまうかもしれない。


そうなっては、僕は心に溜まっている憤懣を述べて周囲の者に説明することができず、この世を去ってしまった者の魂は永遠に恨みを抱くことになるだろう。


そこで、できれば私の頑迷な考えについて説明させてもらいたい。


今まで放置していたことについて許してもらえれば幸いである。




この段の司馬遷の言葉を信じるなら、任安からの手紙か何かに対して司馬遷は返答していなかったという。



そして、司馬遷武帝の近臣(おそらく中書令)として祭祀等のための行幸に同行しなければならず、そして任安は何らかの「思いもよらない罪状」で明日をも知れぬ身であったらしい。




「渉旬月、迫季冬」「恐卒然不可諱」というのは、罪の取り調べから処断までは年越ししないのが基本のため、任安はこのままでは近いうちに処刑されてしまうかもしれない、ということだろう。


「不可諱」とは当時はよく使われる言葉で、死ぬことを指している。






司馬遷の手紙は、任安が死ぬ前に言っておかなければいけないこと、だったらしい。