女の戰い

獻帝伏皇后、聰惠仁明、有聞於内則。及乗輿爲李傕所敗、晝夜逃走、宮人奔竄、萬無一生。
至河、無舟楫、后乃負帝以濟河、河流迅急、惟覺脚下如有乗踐、則神物之助焉。兵戈逼岸、后乃以身擁遏於帝。帝傷趾、后以綉拭血、括玉釵以覆於瘡、應手則愈。以涙湔帝衣及面、潔静如浣。軍人嘆伏、雖亂猶有明智婦人。精誠之至、幽祇之所感矣。
(晋・王嘉『拾遺記』)

後漢献帝の皇后伏氏は、かの献帝の李傕たちからの逃避行の際に、皇后が自ら皇帝を背負って河を渡り、そこで神秘的な力の加護によって助けられたという。



また、皇帝にさえ刃が迫るという危機には皇后が身を以て刃を遮った。



皇帝が足を怪我した際には皇后の衣服で血をぬぐい、装身具で傷を覆ったところ、即座に傷が癒えた。



涙をもって皇帝の衣服や顔を洗ったところ、水洗いしたかのように綺麗になった。




この様子を見た軍人たちも驚き平伏したのだという。







神秘的に過ぎる部分が多いエピソードではあるが、この話からは「伏皇后が献帝を自ら背負って黄河を渡った」「献帝に迫る刃を伏皇后自らが身を挺して防ごうとした」「詳細は不明だが献帝が足を負傷した」といった献帝逃避行の切羽詰まった様子と伏皇后の女傑ぶりが伺える。



そして、神秘的な部分は別にしても、ここまで自分に尽くしてきた皇后のことを、献帝も誰よりも信頼していたのであろうことは想像に難くないところである。