『潜夫論』を読んでみよう−実辺篇その4

http://d.hatena.ne.jp/T_S/20140925/1411572576の続き。


夫土地者、民之本也、誠不可久荒以開敵心。且扁鵲之治病也、審閉結而通鬱、虚者補之、實者瀉之、故病愈而名顯。伊尹之佐湯也、設輕重而通有無、損積餘以補不足、故殷治而君尊。
賈誼痛於偏枯躄痱之疾。
今邊郡千里、地各有両縣、戸財置敢百、而太守周回萬里、空無人民、美田棄而莫墾發。中州内郡、規地拓境、不能半邊、而口戸百萬、田畝不全*1、人衆地狭*2、無所容足。此亦偏枯躄痱之類也。
(『潜夫論』実辺第二十四)



土地というのは民にとって根本となるものであり、ずっと荒れ果てたままにして敵に狙われてはいけないのである。




いにしえの名医扁鵲が病を治す時は、流れが滞っているところを通じるようにし、足りなくなっていれば補い、多くなっていれば排出するようにした。

そうして病気を治し、その名が知れ渡ったのである。



伊尹の政治は、足りないところと余っているところを融通し、多いところから減らして不足しているところを補うようにした。


そうして殷は治まり、殷王は尊ばれたのである。





賈誼は身体の片側が痛む病を嘆いた。



今、辺境の郡は千里の広さに二県があり、戸数はわずかに数百しかないのに太守は何万里もの距離を周回しなければならない。民は住んでおらず、良田も放棄されて開墾されていないのだ。



一方、内地の郡は耕作地は辺境の半分も無いのに数百万もの戸数があり、田は完全な区画にできず、人が多いのに土地は狭く、全員を養うだけの広さが無い。



これは正に身体の片側が痛む病である。



王符先生の語る辺境問題は当時の内地と辺境の格差問題へと広がる。



辺境は広大な土地がありながら打ち捨てられ、内地は人口密度が高すぎる。



名医の治療法のように、この不均衡をどげんかせんといかん、ということだ。

*1:『潜夫論箋校正』により改める。

*2:同上。