一人だけに愛を注ぐ

人主有常不可諌者五焉。一曰廢后黜正。二曰不節情欲。三曰專愛一人。四曰寵幸佞諂。五曰驕貴外戚
廢后黜正、覆其國家者也。不節情欲、伐其性命者也。專愛一人、絶其繼嗣者也。寵幸佞諂、壅蔽忠正者也。驕貴外戚、淆亂政治者也。此爲疾痛、在於膏肓、此爲傾危、比於累卵者也。然而人臣破首分形、所不能救止也。
(仲長統『昌言』)

君主には諌めることができないことが五つあり、それは「后(正妻)を廃し正嫡を退けること」「性欲の赴くままヤリまくること」「オキニ一人だけを指名すること」「太鼓持ちを寵愛すること」「外戚を制限せず驕り高ぶらせること」だそうだ。



これらは臣下が諌めようにも諌めると首と胴が切り離される可能性が高いので諌められない、ということらしい。





このうち、「専愛一人」も批判の対象となっているのは一夫一婦制の現代日本では理解しにくいところではあるが、この時代の考えでは「一人だけに愛情と子種を注いでしまうのは、できる子供の数が限られてしまうので、後継者となる子供が少なくなり、断絶する危険性が高まる」からよろしくないらしい。



ヤリまくりもダメだが、一穴主義もダメということなのである。






これは仲長統の時代である後漢末独特の考えでもなく、前漢末でも確認できることである*1





君主、そしておそらくは君主以外でも同じなのだろうが、家の断絶は何よりも避けるべきとされていた。



そうなると、家の断絶の可能性を自ら高めるような行為は害悪ということなのだろう。

*1:正妻ばかりとヤっていた成帝に対し、他の女性ともアレしなさいと外戚王氏の側が言っていた。