夫有責

相如將聘茂陵人女為妾。卓文君作白頭吟以自絶。相如乃止。
(『西京雑記』巻三)


この相如とは司馬相如のことである。




彼は茂陵の女性を妾にしようとしたが、妻の卓文君は「白頭吟」を作って自ら彼に別れを告げた。



そうしたところ司馬相如は妾を迎えるのを止めたそうだ。




晴如山上雲、皎若雲間月。聞君有両意、故來相決絶。
平生共城中、何嘗斗酒會。今日斗酒會、明旦溝水頭。蹀踥御溝上、溝水東西流。
郭東亦有樵、郭西亦有樵。両樵相推與、無親為誰驕?
淒淒重淒淒、嫁娶亦不啼。願得一心人、白頭不相離。
竹竿何嫋嫋、魚尾何離簁、男兒欲相知、何用錢刀為?齒立如五馬噉萁、川上高士嬉。今日相對樂、延年萬歲期。
(『宋書』巻二十一、楽志三)

「白頭吟」は後世にも一応伝わっている。これがホントに卓文君作であるかどうかは知らないが。





背景として考えられるのは、司馬相如と卓文君は蜀の人間であり、「茂陵の女性」は田舎女の卓文君との対比で都会の(若い)女を意味しているということであろう。

いわば若い都会娘に乗り換えようという司馬相如の下心である。



また、卓文君がかつては貧乏詩人のような存在だった夫のパトロンを兼ねていたことも忘れてはいけない。




武帝の元で宮廷詩人になってから財布も気も大きくなった司馬相如は、妾の一人くらいなら平気だろうと思ったが、正妻の卓文君は激おこで夫有責での離婚を要求してきた、というところだろう。


もしかしたら妻の固有財産が無くなるとその時点でも司馬相如は財政的に困るということだったのかもしれない。