http://d.hatena.ne.jp/T_S/20081214/1229251431という古い記事で、漢の高祖の剣「霊金内府」について紹介した。
その時は全文を紹介していなかったのだが、今回手打ちしたので載せておく。
なおこの剣のゴージャスな外見はhttp://d.hatena.ne.jp/T_S/20110908/1315409475を参照。
宝飾はおそらく天下統一後になされたのだろう。
靈金内府、太上皇微時佩一刀、長三尺、上有銘字難識、傳云殷高宗伐鬼方時所作也。
上皇游豐沛山中、寓居窮谷、有人冶鑄、上皇息其旁、問曰鑄何器。工者笑曰、爲天子鑄劍、慎勿言。曰得公佩劍雜而治之、即成神器、可克定天下。昴星精爲輔佐、木衰火盛、此爲異兆。上皇解匕首投爐中、劍成、殺三牲以釁祭之。
工問何時得此、上皇曰、秦昭襄王時、余行陌上、一野人授余、云是殷時霊物。工即持劍授上皇、上皇以賜高祖。高祖佩之、斬白蛇是。
及定天下、藏於寶庫、守藏者見白氣如雲出戸、状若龍蛇。呂后改庫曰靈金藏。惠帝即位、以此庫貯禁兵器、名曰靈金内府。
(『三輔黄図』、倉)
「霊金内府」とは太上皇が庶民時代に帯びていた三尺の剣で、読めない銘が付いており、殷の高宗の時、鬼方を討伐した折に造られたものだと伝わっている。
太上皇が豐・沛の山中を歩いていたところ、谷に住む刀鍛冶に出会った。
その鍛冶屋は「天子のための剣を作っているところだが、人には言うんじゃないぞ」と言う。
そして、「お前さんのその剣を今作っている剣の材料にすれば、天子の剣は完成する。さすれば天下を定めることが出来るであろう」とか言うので、太上皇はその剣を炉に入れることに同意し、剣が完成した。
鍛冶屋が「その剣はどこで手に入れた?」と聞くと、太上皇は「あぜ道を歩いていたら野人が『こいつは殷の神秘的なお宝やぞ』と言ってくれたものだ」と答えた。
そこで鍛冶屋はその剣を太上皇に持たせ、太上皇は息子である高祖劉邦に与えた。劉邦はこの剣で白蛇を斬ったのである。
高祖が天下を統一すると、その剣は宝物庫に安置された。
その剣が出す白い雲のような霊気は宝物庫の戸から出てくるほどであった。ので、呂后はその宝物庫を「霊金蔵」と改名した。
恵帝が即位すると、その宝物庫は禁中の武器も蓄えていたことから、その剣を「霊金内府」と名付けたのだった。
もともと殷の天子の剣(匕首?)を授けられていた太上皇が、たまたま天子のための剣を作ろうとしていた鍛冶屋に出会い、その剣を完成させる、というファンタジー小説か漫画のような設定。
ダイの大冒険のロン・ベルクのようだ。