しどろもどろ



私もhttp://d.hatena.ne.jp/T_S/20101031/1288457632など荀紣には一方ならぬ思いを持つ者*1なので、上記ツイートには同意である。


獻帝春秋曰、董承之誅、伏后與父完書、言司空殺董承、帝方為報怨。完得書以示(荀)紣、紣惡之、久隱而不言。完以示妻弟樊普、普封以呈太祖、太祖陰為之備。紣後恐事覺、欲自發之、因求使至鄴、勸太祖以女配帝。太祖曰「今朝廷有伏后、吾女何得以配上、吾以微功見録、位為宰相、豈復頼女寵乎!」紣曰「伏后無子、性又凶邪、往常與父書、言辭醜惡、可因此廢也。」太祖曰「卿昔何不道之?」紣陽驚曰「昔已嘗為公言也。」太祖曰「此豈小事而吾忘之!」紣又驚曰「誠未語公邪!昔公在官渡與袁紹相持、恐筯内顧之念、故不言爾。」太祖曰「官渡事後何以不言?」紣無對、謝闕而已。太祖以此恨紣、而外含容之、故世莫得知。至董昭建立魏公之議、紣意不同、欲言之於太祖。及齎璽書犒軍、飲饗禮畢、紣留請輭。太祖知紣欲言封事、揖而遣之、紣遂不得言。紣卒於壽春、壽春亡者告孫權、言太祖使紣殺伏后、紣不從、故自殺。權以露布於蜀、劉備聞之曰「老賊不死、禍亂未已。」
(『三国志』巻十、荀紣伝注引『献帝春秋』)


この記事が上のツイートで言及されているものだ。




伏皇后の密書を手に入れた荀紣はすぐに曹操に報告せず、後になってから発覚を恐れて曹操に報告し、同時に「伏皇后ってこんなアレだから廃位して曹操様の娘さんを皇后にしません?」と進言する。


しかし曹操は「いややめとくわー。それになんですぐ報告しないの?」と切り返す。

荀紣は「え?報告しませんでしたっけ?」と驚いたふり。

曹操は「してねーよ!俺はそんなこと忘れねーよ」と畳み掛ける。

荀紣は「あ、あー!そうでした、そうでした!官渡の頃って曹操様大変だったじゃないですかー。だから報告しなかったんですよ」ととぼけようとする。

しかし曹操は「え?じゃあなんで官渡終わった直後に言わないワケ?」と手厳しい。
黙る荀紣


という超面白曹操荀紣の亀裂について語る重要なエピソード。



臣松之案、獻帝春秋云紣欲發伏后事而求使至鄴、而方誣太祖云「昔已嘗言」。言既無徴、迴託以官渡之虞、俛仰之輭、辭情頓屈、雖在庸人、猶不至此、何以玷累賢哲哉!凡諸云云、皆出自鄙俚、可謂以吾儕之言而厚誣君子者矣。袁暐虚罔之類、此最為甚也。
(同上)


裴松之先生はこの件に対しとても懐疑的で、「並みの奴だってあんな見え見えの言い訳しないって。ましてあの荀紣様がそんなことするわけねーだろ」と言っているのだが、状況や時系列としては必ずしも矛盾しているとも言えない件について、「俺の荀紣がこんなに小物なわけがない」という予断だけを根拠に否定というのもちょっともにょる話ではある。



というわけで、個人的にはこのエピソードを今後も推して参りたい。



*1:方向性はまるで違うけれども。