王戎△

年六七歳、於宣武場觀戲、猛獸在檻中虓吼震地、衆皆奔走、(王)戎獨立不動、神色自若。
(『晋書』巻四十三、王戎伝)

魏明帝於宣武場上斷虎爪牙、縱百姓觀之。王戎七歳、亦往看。虎承輭攀欄而吼、其聲震地、觀者無不辟易顛仆。戎湛然不動、了無恐色。
(『世説新語』雅量第六)

竹林の七賢王戎は、七歳の子供時代に虎を見物しに行った。

そこで虎ががおーと吠えた時に見物人は恐れおののき逃げ出したが、七歳の王戎は逃げるどころか顔色一つ変わってなかった。王戎



・・・というエピソードだが、『世説新語』の方では面白い舞台裏が記されていて話の内容が微妙に違う。




世説新語』では「明帝は虎の爪と牙を取っていた」と書かれているのが『晋書』では言及されていないのだ。
魏の明帝は虎の爪と牙を抜いて安全な虎カフェを開いたのである。


世説新語』に基づくなら、王戎は虎が爪と牙を失って殺傷力が無いとわかっていたのである(だから王戎も他の見物人も近づくことができたのだ)。

他の凡人はそれでも虎が吠えると驚いたが、王戎は「吠えるだけで何もできないから平気じゃね?」と冷静に考えることができたから平然としていたということなのだろう。


つまり、『世説新語』ではこのエピソードは「本当に危険かどうか冷静に判断できる王戎△」ということになる。
肝っ玉よりは冷静さを示すエピソードなのだ*1


*1:「何勝手に話の内容変形させてるんだ『晋書』」とも言えるかもしれない。