潁川有富室、兄弟同居、兩婦皆懷任、數月、長婦胎傷、因閉匿之、産期至、同到乳舍、弟婦生男、夜因盜取之、爭訟三年、州郡不能決。
丞相黄霸出坐殿前、令卒抱兒、去兩婦各十餘歩、叱婦曰「自往取之。」長婦抱持甚急、兒大啼叫、弟婦恐傷害之、因乃放與、而心甚自悽愴、長婦甚喜。霸曰「此弟婦子也。」責問大婦、乃伏。
（応劭『風俗通』佚文）
前漢の時代、潁川に兄弟同居してる金持ち一家がいた。
その兄弟の妻がそれぞれ同じ時期に妊娠したが、兄の方の妻は流産してしまった。
しかし彼女はそのことを隠し、出産の時期になると密かに弟の妻が出産した男子を盗み取り、自分が産んだ子としてしまった。
もちろん弟の側は訴えを起こし、その訴訟は三年たっても決着せず、ついには丞相の裁可を仰ぐこととなった。
この時の丞相は黄覇。かつて潁川の名太守だった人物である。
彼は焦点の男子を二人の婦人の間に置き、「先に取った者の子とする」と婦人たちに告げた。
奪った兄の妻は子供をダッシュで奪取したが、その勢いのあまり子供は泣きだしてしまった。
お腹を痛めて産んだ弟の妻は子供を傷つけるのを恐れて兄の妻がホールドする子供から手を離してしまい、大変悲しい顔をしていた。一方、子供争奪戦に勝利した兄の妻は子供が泣いているにもかかわらず大喜び。
それを見て丞相は「その子は弟の妻が産んだのであろう」と言い、兄の妻を尋問。かくして兄の妻の自供によって彼女の悪事が明るみになったという話。
『棠陰比事』でも引用されている有名な話。
子供綱引き*1の元ネタは紀元前だったという事。
*1:そんな名前じゃないです。
