廟号とインフレ

http://d.hatena.ne.jp/T_S/20110625/1308929028までで取り上げたように、漢の哀帝の時代に立派な業績があった皇帝は「○宗」なる称号が与えられ、皇帝の宗廟において特別扱いされるという制度が確立した。
いわゆる廟号の本格的な始まりと言える。


尊孝宣廟為中宗、孝元廟為高宗、天子世世獻祭。
(『漢書』巻十二、平帝紀、元始四年)

十二月平帝崩、大赦天下。莽徴明禮者宗伯鳳等與定天下吏六百石以上皆服喪三年。奏尊孝成廟曰統宗、孝平廟曰元宗。
(『漢書』巻九十九上、王莽伝上、元始五年)


前漢において太祖高皇帝以外の廟号は以下の通り。

  1. 太宗文帝
  2. 世宗武帝
  3. 中宗宣帝
  4. 高宗元帝
  5. 統宗成帝
  6. 元宗平帝

一方、前漢において廟号の無い皇帝は以下の通り(廟の立てられない廃位された皇帝は除く)。

  1. 恵帝
  2. 景帝
  3. 昭帝
  4. 哀帝

既に廟号を贈られた皇帝の方が無い皇帝より多くなっている*1

後世の中華王朝の皇帝はまず例外なく廟号を贈られるというインフレが常態化していたが、前漢末の時点で既にこのインフレは始まっていたのだ。



*1:ほとんどは王莽さんの仕業だが。