キングダム

実のところ、ここにアクセスしてくる人のリンク元が「王騎」とか「秦の怪鳥」とか「昌平君」とかの検索結果であることがとても多い。
なので、せっかくだからここで秦の統一前後の歴史を題材にした某漫画のネタバレにもなりそうなことを列記してみようと思う。


某漫画は主要な登場人物の多くが『史記』の秦の歴史から取られているが、『史記』「王騎」なる人物は存在しない。
始皇帝(秦王政)が秦王に即位した当初の将軍である王齮([歯奇]という字)と活躍時期が重なり、かつ名も半分共通しているので、なじみの無い漢字であることからわかりやすいように改変したものかと思われる。

ただし、この王齮は秦の昭王(始皇帝の曽祖父)時代の将軍王齕([歯乞])と同一人物であると『史記』注などで言われている。
某漫画では「六大将軍」の一人として「王騎」とは別に「王齕」が挙げられていたので、「王騎」=「王齮」であっても「王騎」=「王齕」ではない。


前にコメントで述べられていた「王騎=王翦」説については、以下の点が根拠に挙げられる。

  1. 王翦は秦が統一を果たす上で特に重要な役割を果たす老将だが、漫画内ではいまだに出てきていない。「王騎=王翦」なら、「出てきていないのではなく、もう出てきているが改名しただけ」と説明がつく。
  2. 王翦は最後の戦いにおいて李信と格の違いを見せ付けている。漫画の方で考えると、これがパッと出のキャラではちょっとアレだが、これが「王騎」と「信」の間のやりとりだとすれば納得できる。
  3. 「王騎」はあの漫画を象徴するようなキャラなのに、いなくなったら漫画そのものの勢いがしぼんでしまう。「王騎=王翦」ならこれからも活躍が期待できるというかこれからが本番。

まあ、今やってるシリーズの最後で「王騎」が死んじゃって「王騎=王翦」説がいきなり覆るかもしれないけど。


そのほか、主要登場人物の『史記』における記述について。

  • 李信

秦王に対し「楚なんて兵20万で楽勝ッスよ」と豪語して失敗したドジキャラ。趙や燕を攻めた。李広、李陵の先祖。

  • 秦王政

秦の始皇帝。本名趙政。漢の時代には呂政などと呼ばれる。

南陽仮守、内史などを務めた。ここも参照

秦王政の父荘襄王パトロンで母のセフレ。秦で凄い権力を握り最後は権力の座を秦王政に奪われる。

(漫画で出たのとは別のタイミングで)反乱起こして死亡。

  • 昌平君

相国。秦王政の母のもう一人のセフレ嫪毐を攻撃して功を挙げた。その後楚に遷り、そこで楚の項燕という人に楚王に擁立されて秦に反乱した。王翦と蒙武に攻められて死んでいる。詳しくはここ

  • 昌文君

相国。嫪毐を攻撃して功を挙げた。

  • 蒙武

将軍。蒙驁の子、蒙毅の父というのは『史記』も漫画も同じ。どっちかというと蒙恬の父として有名。

  • 李斯

秦の要職を歴任した。

  • 楊端和

趙攻めなどに従事。

趙攻めに従事し、王翦と共に趙王を捕らえている。

将軍になるが死ぬ。というか『史記』秦始皇本紀の「将軍壁」について人名と解するのは誤読で「壁」という将軍は実在しないという読み方の方が多分主流。